週刊ダイガクイン

週刊ダイガクインは、毎週更新される日本教育大学院大学からのメッセージです。

「本当にいい教育とは何か」ということを考えることがあります。ヒントはたくさんあると思うのですが、その中でも最近注目を集めているオランダの教育(ピースフルスクールやイエナプランなど)を見て、気づいたことがあります。それは「子どもたちはできる」を前提としていることです。日本で教育について考えるとき、どうしても「できないことを教えることで、できるようにする」を前提にしてしまいがちです。ところが、オランダの教育では、「できるかぎりのことを子どもに任せる」「できないことだって、やっているうちにできるようになればいい」と考え、その過程にどのように大人や先生が関わっていくか、にフォーカスしているように見受けられるのです。まず子どもだけでやってみる。できないことは何か、できるようになるには何が足りないのかを自分で考えてみる。このようなプロセスを経て得たものは、必ず子どもたちの未来を創る力になっていきます。子どもを信じることは、未来を信じることなのです。
子どもはある時期、肉体的にも精神的にも知性的にも大きく成長します。いわゆる成長期です。ある日を境に、急速な成長を遂げた子どもは、大人への階段を駆けあがっていきます。ときに周囲の大人がその変化についていけないことがあるくらいです。では、その成長期を過ぎると、人間は成長できないのでしょうか。肉体的には、そういう部分もあるかもしれません。いくらトレーニングをしても肉体の衰えを完全に止めることはできないからです。しかし、精神や知性は違います。人間は学び続ける限り、一生、成長し続けることができます。いわゆる勉強的な「学び」だけではなく、身の回りの人や出来事から「学ぶ」ことだってできます。昨日より今日、今日より明日、成長し続ける大人たちがたくさんいる社会をつくることは、単なる夢物語ではないと思いませんか。
目の前に課題をもった子どもがたくさんいるとき、あなたならどう考えますか。多くの大人が「こんなにたくさんの子どもたちに同時に対応するのは無理だ」と考えてしまうのではないでしょうか。誤解を恐れずに言えば、その通りです。どんな大人にだって、同時に対応できる限界は必ず存在します。でも、このように考えることもできませんか。「子ども1人を幸せにできない大人が、子ども2人を幸せにできるわけがない」と。0をいきなり2や3にするのではなく、できることからやっていく。まずは0を1にする。そうすると、次は2ではなく3になったり4になったりすることもある。目の前の1人の子どもを変えることには、そんな力があることを信じてみませんか。
「考えなさい」「頭を使いなさい」などは、大人が頻繁に子どもにかける言葉のひとつではないかと思います。しかし、「考えるとはどういうことか」「頭を使うとはどういうことか」というあたりまえの疑問に対する答えの用意がないまま使ってしまうことがあるように感じます。そんな場合には「可能性があることを書きだしてみようか」「できるところまででいいからやってみようか」など、手を動かすように促すと、子どもは何かを閃いたり、辿るべき道筋を発見したりします。つまり「考えること」「頭を使うこと」による結果を体感することができるのです。ただただ悩むのではなく、手を動かす、ときには身体を動かす。そうやって「頭を使うこと」を学んでいくのです。
子どもたちは非常にたくさんの疑問をもちます。年齢が低い間は、その疑問を素直に口に出すことが多く、ときに大人を困らせるような質問をされた経験がある方も多いでしょう。そんなとき、大人が「そんなことは知らなくていい」とか「いつかわかる」などの返事でお茶を濁そうとすると、子どもは次第に質問をしてはいけないのではないか、と思いはじめます。子どもは子どもなりに「大人を困らせてはいけない」という気持ちをもつのです。これが、年齢が上がったときに、何か疑問をもっても質問しない子どもを育ててしまう一因になっているのではないかと思えるのです。答えるのが難しいような質問でも、疑問に思ったことを褒め、質問できたことを褒めて、まずはいっしょに考える姿勢を示すことで、質問して新しいことを学ぶのが楽しい子どもをたくさん育てたいですね。

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